2016年7月25日月曜日

とんとんぼっこ

カープの黒田が200勝を決めた7月23日、とんとんぼっこの合評会でした。
今回、提出された原稿5編中、2編は公募に向けての作品でした。内一編は某公募(仮に公募先Aとします)への応募に向けて書かれたもの。この作品には、合評者6名中、5名までが大絶賛でした。
ところが、最後のひとりが異を唱えました。
「この作品をAに出してはダメなんです!」
テーブルをひっくり返すような意見に、一同、唖然……。
彼の意見によると、この作品は確かに、完成度が高い。よく書けている。公募先A向けである。
だからこそ、そこに出してはいけない。
向いているということは、これまで、繰り返し繰り返し、応募者にテーマとして取り上げられてきた題材であるということ。そういう題材で歴史ある公募を突破するのはむずかしい。
それは一同を、大いにうならせる意見でした。
公募を勝ち抜くには、完成度の高さはもとより…いや、むしろ、斬新なアイデアがより必要である場合があるかもしれません。

美しくセッティングされたテーブルをひっくり返すような意見がでて、ひっくり返ったテーブルをおもしろがる人がいたり、テーブルを海に浮かべて漕ぎ出す人がいたり、やっぱりテーブルはテーブルとして、きちんと整頓し直す人がいたり……。
合評は真剣勝負。時に火花が散る場面もあり。そして、感じたままの真摯な意見をもらえる貴重な場であると、あらためて感じられた時間でした。

せみの音がワシャワシャ響き渡るこの時期、広島は熱いです。
カープ、そして近づく「あの日」。熱狂と鎮魂。
広島在住の児童文学作家・中澤晶子さんが著書『3+6の夏』(汐文社)のあとがきに、こう書かれています。
「それこそ数えきれないほどの慰霊碑が、原爆で殺されたひとびとを悼んで、ひっそりとたたずんでいます。(略)いつもは目立たないそれらの碑にも、夏が近づくとだれかが花を手向けています。わたしたちは、「あの日」から姿の見えなくなった、たくさんの子どもたちに、街角でばったり出合ったかのように、小さく息をのんで目礼し、再び炎天下の道を歩いていくのです。」
ここにいて、何を書くか。毎年この時期になると、ふと頭をよぎる問い。とんとんぼっこのみんなと考えていきたいと思います。

次回のとんとんぼっこは10月22日(土)13時より。 広島市まちづくり市民交流プラザで。

                              
                             (巣山ひろみ)